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抱っこリレーが日常に。/日本三大秘境「椎葉村」に移住して考えた 子どもと暮らし1

【新連載】「秘境」と呼ばれる椎葉村には、子どもたちの育ちに大切なヒントがたくさん。移住者から見た暮らしや人々について、ご紹介します。

はじめまして、おもちゃコンサルタントの池田文です。

日本三大秘境といわれる宮崎県椎葉村に住んでいます。
普段は、地域学校協働活動推進委員として放課後の子どもたちへ活動提供や、村の交流施設でのおもちゃイベント企画、ベビーシッターとしての訪問保育、小さな学習塾の運営などを通して、地域の子どもたち・子育て中の親御さんと関わっています。

SNSやブログなどで椎葉の子どもたちの様子をお伝えしていると、「いいね!」「行ってみたい。」という声をいただいたり、私自身も移住の理由の一つに、椎葉の子どもたちの育ちへの関心がありました。

先が見えない時代、子どもたちがいろいろなことに挑戦していける土台ってなんだろう? 椎葉にその答えがある気がしています。

このgood us連載では、山村で育つ子どもたちを紹介しながら、私なりの気づき・学びを子育て中の皆さんや、保育や子どもに関わる皆さんと共有できたら嬉しいです。

日本三大秘境?椎葉村の紹介

椎葉村ってどこにあるの?という方がほとんどと思います。 この手書き地図では、九州のど真ん中であり、またインターネットで航空写真を見ていただければ、まさに「秘境」といえる山の中であることがわかると思います。 面積でいうと約537㎢、東京都23区より少し狭いという広大な山間地(端から端まで山道で2時間超え)に約2400人で住んでいます。
保育所は4か所、小学校は5校、中学校は1校あります。中学生の7割は寮生であり、高校は村内にないため、中学卒業後は皆、椎葉村を出て生活をすることになります。 中学生までの子どもたちの数は200人ほどで、肌感覚としては「けっこういる」という感じで、三人兄弟、四人兄弟などの家庭も多いです。

「子どもは宝」。子どもへの関心の強さ

椎葉に暮らし始めて感じるのは、「子どもは宝」という風土が地域に根付いていて、地域の人の子どもへの関心や声がけがとても多いことです。
地域の集まりに行くと、赤ちゃんをリレーのように順に抱っこしていく男性陣や高齢の方々がいたり、小さな子どもたちと一緒に遊び始める大人も多いです。 また、大人が集まって何かしている間、大人が程よい距離から見守りつつ、子どもたちだけで好きなように楽しんでいることがよくあります。 特に、大きい子たちが小さな子の面倒をみたり、小さい子を入れて遊ぶのがとても自然で上手です。
「小さな子は手がかかるうるさい子」というイメージはまったくなく、むしろ「かわいい!」と大きい子たちの方から小さな子に集まるようなところがあります。
子どもたちが赤ちゃんとお母さんを囲む場面も、良く見られる風景です。 子どもたちが「かわいいね」「あなたのことが好きだよ」「関心があるよ」というメッセージの連鎖の中で育てられると、大人との関係性や子ども同士の距離感は圧倒的に近くなるということを、地域の大人と子どもの関係や、放課後の子どもたちから感じます。

人を信頼し、集団の中で自立していく


これまで都市部の学童や支援団体で働いていた時には、小学校高学年から中学生くらいの年齢の子どもたちと関わるには、ゆっくりと一人ずつ信頼関係を築くことがとても重要でした。
それに比べると、椎葉の子どもたちは、初対面の大人に対しても疑いを持たず、「だれ?」「何しているの?」と興味を素直に表現して関わってきます。 また前述したように、大きな子どもたちが小さな子を含めて遊ぶことが上手なため、小さな子たちも大きな子が大好きで「〇〇君と遊ぶ!」と自然に遊び集団が形成されており、その中で自分のポジションや役割を獲得していきます。
意図的に行われる活動の多い都市部の子どもたちに比べると、子どもたち同士で過ごしている時の、大人による(指導としての)介入は圧倒的に少ないです。
大人に介入されず、自分たちで遊ぶ子どもたちを見ていると、
「子どもって、本来はこうだったんだな」
と思うことがよくあります。

たくさんの子どもがいるわけではないので、「いる人で遊ぶ」が当たり前の椎葉の子どもたちにとって、遊びをその場でメンバーに応じて臨機応変に変えながら楽しむことはごく自然であり、お互いを理解しながら受け入れて過ごす力や、集団の中で自分ができることを楽しむ力が養われていると感じています。
そんな子どもたちの集団形成に大きく影響していると思われる地域の暮らしや文化についても、これからの連載で紹介したいと思います。